現代をサバイブする人々~半自給農民という生き方~
ばたおさんを取材してみた 第一回 自給について

運営責任者いわく、当サイトの目的の一つは大手メディアが取り上げないようなマイナーな話題に焦点を当てることらしい。そこで今回から、時間と金とやる気の許す限り、オルタナティブな生き方を志向する人々のもとに取材に赴き、生きづらい現代をサバイブしようとする彼(女)らの試みを紹介してゆくことにしよう、ということになった。我々執筆陣も今まさに競争社会を半分降りて生活する方途を模索中であり、先達に教示を請い、かつ得た情報を独占せずに全国の同志(?)にシェアしてしまおうという寸法である。今回話を伺うのは「できるだけ働かず、できるだけ消費しない」をコンセプトに半自給生活を実践しているばたお氏である。パクれそうなアイディアを聞き出す…もとい困難な時代を生き抜くヒントとなる情報を読者の皆様にお届けするため、取材班は河内長野へ向かった。

第一回 自給について

ーー…というわけで、本日はよろしくお願いいたします。まずはどのような活動をされているか、簡単に説明をお願いします。

できるだけ働かずに、できるだけ消費せずに生きる、ということですね。ここでいう「働く」というのは賃労働のことですが、賃労働をする割合を減らせば当然賃金は減りますから、消費も減ります。あとは自給ですね。もちろん完全な自給自足なんて夢物語ですけど、できるだけ自給して、その分賃労働のウェイトを減らすと。大雑把に言えばそういうことをやっています。


ーーばたおさんの活動の核は自給ですよね。twitterでも度々「農」の重要性を強調されていますが。

家庭菜園レベルですけどね。ただ、一般的な庭でもけっこう自給できるんですよ。野菜に関しては二人分であればほぼ自給できるんです。
今はゴーヤとオクラがちょうど終わりかけているんですが、それが主です。もうそろそろ秋冬の野菜を蒔いていかなあかんのですけど、ちょっとダラダラしてて…やらなあかん(笑)
エネルギーの自給に関しては、街中なんでやりづらいっていうか。具体的にはソーラー発電とか小水力発電とか、あるいは井戸とか掘ろうかなって思ってたんですけど、ただちょっと住宅街だからやりづらいってのがあって。できないことは全然ないと思うんですけど、手が回ってない状態です。だからもっぱら食料の自給、食料っていっても基本野菜だけですね。野菜以外は普通にそのまま買うっていう感じで。米とか肉魚をたまに買うぐらい。


ーー家庭菜園のビギナーにもおすすめできる作物を教えてください。

やはりゴーヤですね。比較的低コストで簡単に育てられますから。ただ、夏場の野菜ですけどね。夏の方が収穫悪いんですよ。


ーーそうなんですか。

いや、一般に野菜は夏の方が育つんですけど、ウチは農薬使わないんで虫がすごくて。冬のほうが育ち悪いんですけど、害虫がいないので結果的に冬のほうが収穫良くなります。もっとも土地柄によって違うとは思いますけれど、ぼくのやってるとこではそういう感じですね。


ーー農薬は使わないとのことですが、肥料はどうしていますか?

肥料もリンとかカリウムとか、いろいろ栄養のバランスがあるって言われているんですけど、ウチはそういうの関係なく基本的に鶏糞だけ。鶏の糞なんで、日本国内で自給できますから。


ーー仄聞するところ、ばたおさんたちは三重にも土地を持っているとか。庭レベルより大規模な農業をされているんですか。

最初はあまり世話のかからない野菜を育てようと思って土地を買ったんですけど、獣害が思いのほか酷くて。シカとかイノシシ。全国的な傾向として獣害がすごく増えてるみたいで、なかなか個人で農業なんてできない状況になっていて。人がずっとそこに住んでいれば動物も怖がるから大丈夫だけど、ぼくらは基本的に留守にしているので。電気柵とかも考えましたけど、そんなのにお金かけるのも嫌だなあって思って。だから、レモンバームやキクイモっていうハーブを…これも芋っていう名前やけど、いちおう分類的にはハーブ。根っこの部分が芋みたいなのでキクイモって言う名前なんですけど、要は雑草。で、それを育ててみようと思ったんですけど、全然有効活用できていなくて。もともと土地は、無くなるのが怖いからただキープ的に買ったっていう側面もあって、草刈りとかしなあかんので維持費だけがかかってしまっているのが現状です。


ーー家庭菜園をやるのとやらないのでは食費はどれくらい違ってきますか。

実は多少減るくらいなんです。家庭菜園って自分で世話しないといけない。当然ながら放っておくだけではできないので、トータルで考えたら場合によってはコスト増ですね。だからただ支出を抑えたいだけなら激安スーパーで買った方が楽なんですけど、それって資本主義を半分降りる低消費というコンセプトに反するんですよ。資本家のもとで働いてお金もらって、資本家が運営するスーパーから買う、となると本末転倒なわけでね。相互扶助っていうのは自分達で仕事作って自分達で回すってことであって、究極的にはそういう共同体づくりみたいなものを目指しているので。

ぼくは何でも安く手に入れられる状況が永続するとは考えていないんです。今はそれでいいのかもしれませんけど、将来的に日本の経済状況なり何なりが悪くなっていくと思うんですよ。今やグローバル化によって世界中の物がスーパーで買えるんですけど、たぶん何でもかんでも安く買えるっていうのは今のうちで…というか、もうすでに物価が上がっていて、10年前20年前に比べても家電や携帯は安くなっているけど、食料とか、小麦製品とかは驚くほど値上がりしていますよね。だから将来的に自給のノウハウを持ってたら活きてくるんじゃないかと思っていて。仮にお金稼げなくなっても、ほとんどタダみたいに自給できるんで。それに、3.11みたいな地震とか熊本地震みたいなのがきたら本当に流通ストップするわけですよ。そんな非常時にも食料を手に入れられるように、そういう観点でやっています。だから、たぶんあまり賛同出来ない人は賛同できないのかなっていう。


ーー安く済ませることだけが目的ではないんですよね。他方、例えば一般的な主婦の方たちが趣味でやっているような家庭菜園とも違いますよね。収穫という結果を重視する生活のための家庭菜園とは違って、育てるプロセスに楽しみを見出して、お金をかけてやっているわけだから。

大金をかけてホームセンターで100円200円もするような苗を買ってきて、植えてアンプルの肥料をさして…収穫したらそれで終わり、また改めてホームセンターで種を買う。これって結局野菜を普通に食料雑貨店で買うより高いんですよ。ぼくらがやっているのはそうじゃなくて、基本的には農薬を使わずに、肥料も鶏糞だけって決めて、実から種もとって、その種をまた植えるというように、大手種苗会社に依存しない自給農っていうのを目指しています。


ばたお氏らは単に出費を抑えるためだけではなく、より長期的な目標を設定して半自給生活を送っているようだ。そのため一般的な低消費勢からはあまり支持を集めていないそうだが、読者諸賢はどのように感じただろうか。
早くも我々にも模倣できそうな具体的サバイバル術を盗むという当初の目論見が崩れ始めてきたような気がするが、気にせず続行する。単に氏の活動を紹介するだけでも面白いだろう

次回のテーマは賃労働である。河内長野市の工場に勤めているという氏の働き方について具体的に伺う。

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