元気がない時に読むおすすめの小説(村上龍小説三作品)

人間誰でも、全てを破壊したくなったり、殺意の波動に目覚めてしまったり、死にたくなったり、蒸発したくなったり、そういう気持ちになることがある(断定)

大抵それは膨大な人生という時間、そして自意識との戦いからくるものだ。自分は何のために生きているのか、あの時自分は何であんなことをしてしまったのか、なんで自分はこんなに貧しく苦しいのか、なぜ自分は何者にもなれないのか。

何に対しても興味が持てず、ただ時間ばかり過ぎていく。過去の自分を責めたり、今の自分の無力を嘆いたりする。普通の人間はそれに耐え切れない。だから忙しいふりをしたり、何かに没頭するふりをして、誤魔化してしまう。そして人生の貴重な時間を浪費する。「お前の人生とは一体何なのか、この世界は何のためにあるのか」という問いから逃げてしまう。別にそれが悪いとは言わない。それが普通だと思うからだ。

ここではなぜかそういう問いから逃げられない不器用な人、自意識との戦いで疲れて元気がない人が読むべき小説を紹介したい。

今回おすすめする小説は村上龍の小説だ。

村上龍の小説は好き嫌いがかなり分かれる。「生理的に無理」という人も多いらしく、暴力的な表現が苦手な方にはあまりおすすめできない。読んでみて気持ち悪くなったという人は残念だが、相性が悪かったと諦めていただきたい。でも向いてる人には本当に向いてるし、元気が出るし面白いのだ。この腐った世界をどうにかしてぶち壊してやりたいという元気が出てくる。


①愛と幻想のファシズム
筆者が読んだ最初の村上龍の小説である。死にたい時に読むことをおすすめする。小説の舞台は少し昔の日本だが、主人公は徹底したサバイバリストで、民主主義を否定し、死にたいなどという人間には問答無用で「死んでしまえ」と言えるカリスマだ。未だかつてそんな主人公がいただろうか。普通はそういう場面では「死なないで」だの「生きていればいいこともある」だの「私も一緒に死ぬ」だの言うのがお決まりなのだが、「お前なんていないほうがいい」と気持ちよくストレートに言える主人公がいただろうか。私は今まで良い意味でこんなイカレた物語を読んだことがなかったので衝撃を受けた。お前など必要ないと言われて、なぜか生きる気力を貰えるのだ。面白いことだ。

②村上龍映画小説集
働きたくない。勉強もしない、ボランティアもアルバイトも、政治活動もしない。何もしない。お金もない。「青春」の真逆のような腐った状況でもがき苦しむ主人公。それでも働くことは何かを諦めることだから、嫌でも働かない。普通はそこまで意地を張れない。嫌だ、嫌だ、と思いつつもスーツを着て、真面目に就職活動する。主人公はそれをしなかった。自分の才能と無気力に向き合う勇気をくれる小説だ。この小説を読んで私は就職活動をしようと思わなくなった。少し前までは周囲の期待に応えて、ちゃんと就職しようと思ったこともなくはない。でもやっぱり子供の頃からサラリーマンは嫌いだったし、その「周囲」も「自分」もいつかは死ぬ存在だ。どうせいつか死ぬのであれば、自分の能力を全て試してから死んだほうがいい。周りから何を言われようと関係ないんだ、そう思わせてくれる作品。

コインロッカー・ベイビーズ
「破壊」という行為そのものを小説にしたような作品。わかる人間にはわかると思うが、この世界は巨大なコインロッカーなのだ。鳥かごだ。今この文章を読んでいる貴方も生き辛い世界だと思っているかもしれない。少しでもおかしなことをすれば、すぐ精神病院か刑務所にぶち込まれる。コインロッカーで産声をあげたキクとハシがそんな息が詰まる腐った世界を粉々に叩き潰す。「生きる」ということはどういうことなのか。「破壊する」とはどういうことなのか。『愛と幻想のファシズム』も『村上龍映画小説集』もどちらもクレイジーで素晴らしいのだが、『コインロッカー・ベイビーズ』はどの作品よりもテーマが普遍的で、「生きること」に直結しているゆえに与えてくれるパワーもでかい。


別に読む順番なんてどうでもいいが、個人的には①②③の順番で読んでいただきたい。読み終えた頃には君も村上ドラゴン信者だ!他にも『五分後の世界』とか『希望の国のエクソダス』とか読んでほしい作品が色々あるが、とりあえずは上記三作品を読んで元気になっていただきたい。

Photo © Joi Ito – https://www.flickr.com/photos/joi/17188426/, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1327546による

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