今回はある本を紹介しようと思う。近頃はテクノロジーの進歩が著しかったり、社会の変化が激しい。その理由を探るうえで中々ためになる本だと思う。本のタイトルは「ポスト・ヒューマン誕生」だ。
著者はアメリカではかなり有名なレイ・カーツワイルという発明家、起業家が書いたものだ。おおまかに説明すると、テクノロジーの進歩が人間社会にどのような影響を与えるか、そしてテクノロジーの成長速度や専門的な解説などが書かれている。2005年に出版された少し古い本だが最近になって買う人もちらほらいるようだ。
この本に書かれていることをいくつか説明したいと思う。600ページ近くある本なのでほんの一部になると思うが。
進化とは、増大する秩序のパターンを作り出すプロセスの事である。
まずカーツワイルが見出した進化の段階について書く。
①物理現象から化学反応までの段階
ビッグバンが起きた直後の宇宙は物理現象しかない世界だった。しかし、そこから数十万年後、陽子、中性子、電子によって原子が形成された。さらにそこから数百万年後、原子が集まって分子が生まれた。そして、すべての元素の中でも炭素が最も用途が広いものであり、他の元素と違って四方向で結合できる。それが情報量の豊かな三次元構造を作った。
②化学反応による生命誕生からDNAまでの段階
時間がたち、炭素ベースの化合物はますます複雑化した。自己複製機構を形成するまでになり、ここで生命が誕生した。さらに大きな分子について記述する情報を保存するためのデジタルな仕組み(DNA)を進化させた。
③DNAから脳を持つ生物誕生までの段階
さらに時間はたち、生物の中でもDNA主導の進化により、自身の感覚器官を使って情報を検知して、自身の脳と神経系に情報を蓄える有機体が作り出された。ここの進化の段階で、人類は生まれた。
学校等で習う「進化」についてはここあたりで終わるのではないだろうか?ダーウィンの進化論や自然淘汰等。進化は生物のみに焦点を当てがちだが、カーツワイルはそうは考えていないらしい。どうやらまだ続きがあるようだ。
④脳を持つ生物がテクノロジーを生み出す段階
理性的かつ抽象的な思考と、他の指と向かい合わせになった親指を持つ人類は進化の次の段階に到達した。ここでテクノロジーが人類の手で作られた。まずは単純な機械に始まり、精密な自動装置へと発展した。ついには、複雑な計算通信装置ができ、テクノロジー自体が情報の精巧なパターンを感知し、保存、評価できるようになった。テクノロジーの進化率を比較すると、もっとも進んだ哺乳類では、10万年ごとに脳の容量を約16ミリリットル増やしてきたのに対し、コンピュータの計算能力は、今現在、毎年おおよそ二倍になっている。
⑤人間のテクノロジーと人間の知性が融合する段階
正直ここからは今現在より先になるので、省こうと思う。カーツワイルのいう進化の性質は、「前の進化の段階で得た手法を次の進化に使う」という事らしい。化学反応によって生命が生み出され、DNAによって脳を持つ生物が生み出され、脳を持つ生物からテクノロジーが生み出されたように。この本はその進化の先について実際のデータ等から考察している書物である。
興味のある人は是非読む事を勧める。